先日Amazonが新世代のKindleのラインアップを発表しました。
詳しい内容は、ガジェットや米国の出版業界に詳しいプロの情報と分析が載っている下記のサイトを参考にしていただくとして、私は「プロのユーザー」の立場から語ってみようと思います。
先日アマゾンのクラウドに蓄積している電子書籍を数えたら500冊以上になっていました(タダ本を大量にダウンロードしているのと、読みかけが多いので、読了しているのはたぶん200冊程度)。発売前に出版社から無料でいただくARCも含め、紙媒体の本も沢山読みます。沢山処理しましたが、わが家にはまだ5000冊ほどの本があります。老眼が進んでいるので愛用するようになったオーディオブックも60冊持っています。子どもに読書を教えているので、児童書や絵本も大量に読みます。Goodreadsにポストしているのは最近のもので、しかもその一部です。自費出版のものも沢山読んでいますし、紹介するほどもないしょーもない本はポストもしてません(そういうのはけっこう多いです)。
つまり、数だけなら図書館の理事をしているアメリカ人の友人よりもこなしていると自負しています。
こんな活字中毒の私が本(紙媒体、電子書籍、オーディオブック)を購入する場は、初代Kindle前にはバーンズ&ノーブルなどの書店がけっこう多かったのですが、今ではほぼ完全にアマゾンになっています。
これからお話する部分が、「プロ」の皆さんが見落している部分です。
Amazonのプライムサービスを使い始めるまでの私は、欲しい本が本屋になければ「取り寄せれば来週には来ます」と言われて待つことができたのです。仕方ないから、そこにある別の本を買ってきたりもしました。
ところが、初代のKindleを購入してからの私は「我慢ができない消費者」になり果ててしまったのです。
欲しい本を「欲しい」と思ったとたんに購入できるのですから、「車を運転して本屋に行って、欲しい本がない場合は注文してもらい、数日後にまた車を運転して本屋に行き、辛抱強く並んで本を購入する」というプロセスは想像しただけて避けたくなります。電子書籍になっていない書籍でも、「待てない体質」になってしまった私は、プライムサービスの2日め無料配達が待てなくて、3.99ドル払って翌日配達にしてしまいます。
この安楽な購入体験の味を覚えてしまうと、本だけでなく他のものにもそれを求めます。ついにアマゾンで台所用品や3000ドル以上する電化製品まで買うようになってしまったのです。
最初のうちはiPhoneの無料アプリで本を読みましたが、老眼が急速に進んでしまいiPhoneで読書は不可能になってきました。フォントを大きくできるKindleのありがたさが身にしみるようになりました。同時に悟ったのが、オーディオブックの素晴らしさです。コンピューターに向かう仕事をしていると、休憩のときに読書をするのが辛くなるのです。でもオーディオブックだと目が疲れていても読書をすることができます。家事をしながら聴けるのも嬉しいところです。そして、私がオーディオブックを買う場が、Amazonが2008年に買収したAudibleなのです。
バーンズ&ノーブルやSonyがどんなに素晴らしいガジェットを作り上げても、こんな私が他のデバイスに乗り換えることはまずありません。なぜかというと、私はすでにAmazonに大量の本をため込んでいるからです。iPadにはKindleアプリがあるので読めますが、それ以外のデバイスでは500冊以上アマゾンにためこんだ私の電子書籍が読めないので、乗り換えるつもりはまったくありません。
こういった人は私だけではないでしょう。
さらにAmazonは、新たにImmersion Readingという興味深いことを始めるというのです。
Kindle bookとAudibleを買えば、それらをシンクし、読んでいるところをハイライトしてくれるのです。アメリカ人にとってどうかは知りませんが、日本人の英語学習者にはすごく魅力的なのではないでしょうか。
巷では、「なぜKindle Fire HDを出す必要があるのか?」とか「Apple のiPad Miniに喧嘩を売っているのか?」といった疑問、批判、解説が飛びかっていますが、アマゾンどっぷりユーザーの私はアマゾンの狙いを肌で感じます。
新しいKindleのラインアップは、CEOのBezosが説明したように、「アマゾンのサービスを売るためのデバイス」なのです。デバイスで儲けるつもりなんて、これっぽちもないのです。あまり上品でない例えをすれば、これまでのKindleユーザーの行動からこれまでKindleを買った事がない人のニーズを推測し、彼らの欲望をかきたてる(あるいは好奇心をかきたてる)デバイスを安く提供することで、「アマゾン依存症患者(私のようなヘヴィユーザー)」を増やそうとしているのです。
その手口が分かっていても別れることができないし、別れたくないのが私なのです。
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それでは最後に「どのデバイスを買えばいいでしょうか?」という質問へのアドバイスです。
●現時点では日本語対応の新世代Kindleの発売は不明です。日本語機能を求める人は、今買わないほうがいいでしょう。
追記:日本でも発売が決まりました!日本ではPaperWhiteとKindle Fire、Kindle Fire HD の3種だけのようです。
●「これまでKindleを持ったことがなく、英語の本を読むために買いたいが、数は読まない」、「(壊したり、紛失したりする可能性がある)子ども用に欲しい」という人にはもっとも廉価なKindle 69ドルがおすすめです。
●「飛行機で旅することが多い」という人で、英語の読書のみに使いたい人にはKindle Paperwhiteがおすすめです。飛行機のヘッドライトはあまり明るくないし、隣りの席の人が眠っているときに点灯するのは気がとがめるものです。そういうときにとても便利です。
私の小さな手でも片手で軽く持てます。
旅先で新しい本をダウンロードしたい人には3Gを購入する価値があります。Wi-fiがない場所でも本をダウンロードできるのはありがたいものです。バッテリーが長時間もつのも遠距離フライトにはとても便利です。私が持っているKindle Fireは長距離フライトの途中で電池切れします。
●「読書だけでなく、映画やテレビ番組も観たい」、「ほぼ読書専用だけれど、白黒じゃなくてカラーの表紙が見えたほうが分かりやすい(これ私)」、「コンパクトなほうが、持ち運びしやすい」+「HDでなくてもいい」という人には、159ドルのKindle Fireで十分です。
●上記に「ちょっとの価格差ならHDのほうがいい」という人は、199ドルのKindle Fire HDをどうぞ。
●「7インチの画面では小さすぎる。もっと大きな画面で読書も映像も楽しみたい」という方はKindle Fire HDの8.9インチをどうぞ。
●デバイスとしてのパフォーマンスを重んじる方は4G LTEのKindle Fire HDをどうぞ。
大原ケイさんの記事に「データの上限が月250MBじゃ、映画の1本もダウンロードできない 」というITギーク系のdisりがありましたが、私もツイッターやFacebookで似たようなコメントを目にしました。でも、これまでのようにアマゾンから映画を購入すればダウンロードは無料の筈です。この「250MB」はアマゾンから購入するコンテンツに関してはアプライしないのではないかと思っています。私は技術者ではないし、根拠となる情報はみつけていませんが、アマゾンがこれらのガジェットを廉価で売る理由を考えれば、消費者がアマゾンからどんどん買いたくなるようにできている筈です。
●ストレージについて:アマゾンから購入した本や映像は、読んだり観たりするときだけクラウドからダウンロードすればいいので、これまで困ったことはありません。旅に出るときに困らない数だけを入れておけばいいのです。旅先にWi-Fiがあれば、またクラウドから引き出すこともできますし、沢山の映像を持って長旅をする必要がある人以外は、ストレージが大きい必要はないと思っています。
●タブレットを期待するなかれ。
アマゾンKindle Fire HD 4G LTEのほうが(同レベルの)新iPadよりも「初年度で400ドル以上もお得!」という点ですが、Kindle FireはiPadとは用途が違うと思います。
私自身の使用経験だけでなく、海外や国内旅行、コンベンションで使用者を観察したところから、iPadはビジネスが主で娯楽にも使え、Kindle Fireはあくまでも「娯楽用」と考えています。
Kindle Fire HDは「アマゾンのファン(依存患者)」を増やすために作られたツールであり、iPadのように「いろんなことに使える」タブレットではありません。Facebookができるとかemailを送ることができるとかいったことは、「アマゾンのファン(依存患者)」を増やすための「オマケ」だととらえるべきでしょう。
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